朝、湯気が立っていた。
何の変哲もない、味噌汁の湯気。
でも、その瞬間だけは、世界が少しやさしく見えた。
東京で暮らしていたころ、
毎日が騒がしく、何かを追いかけていた。
久しぶりに帰った岩手の台所で、
ふとその湯気を見たとき、思った。
——ああ、これが贅沢だな、と。
派手じゃない。
豪華でもない。
でも、ちゃんと生きてる時間がここにある。
岩手の食卓には、そんな瞬間がいくつもある。
湯気、木の器、焦げた魚、雪の光。
どれも特別じゃないのに、
なぜか心に残ってしまう。
このメディアは、
そんな岩手の“静かなうまさ”を伝えるために生まれました。
名前は「素朴の贅沢」。
読む人の心に、
少しでも温かい湯気が届きますように。
